映画『エイプリルフールズ』のあらすじ・ネタバレ・感想

エイプリルフールの些細な嘘が大きな出来事に膨れ上がっていく、群像コメディー。

今回は、映画『エイプリルフールズ』の作品概要・あらすじ・ネタバレ・感想・視聴方法をご紹介します。

『エイプリルフールズ』の作品概要

一年に一度、嘘をついても許される日「エイプリルフール」。その日、人々が軽い気持ちでついた嘘が、いろいろなところで大事件へと発展していく。嘘をテーマに、多くの人の人生が変わっていく様を描いた群像コメディー。

監督・石川淳一と脚本・古沢良太のペアは、かの有名ドラマ「リーガルハイ」と同じ組み合わせ。戸田恵梨香や松坂桃李などの豪華キャストが27名も勢揃いした。その人気の高さから、ノベライズもされている一作。

『エイプリルフールズ』のあらすじ

4月1日はエイプリルフール。中学生の少年は自分が宇宙から派遣された人間「スペースノイド」だと信じてしまう。清掃員は自分を捨てた男に電話をかけて子供を認知してほしいと頼むが、エイプリルフールだと思われて冷たくあしらわれる。

他にもいくつもの嘘と真実が折り重なり、それぞれの小さな嘘は、大事に発展していく。

登場人物紹介

新田あゆみ（戸田恵梨香）

病院の清掃員の女。精神面にトラブルを抱えている。

牧野亘（松坂桃李）

外科医を名乗る男。女をとっかえひっかえしている。

接客係（ユースケ・サンタマリア）

高級レストランのフロアを担当している男。

オーナーシェフ（小澤征悦）

高級レストランのオーナーシェフ。警察に友達がいる。

麗子（菜々緒）

CAを名乗る女。牧野と高級レストランでデートをしていた。

『エイプリルフールズ』のネタバレ

起、承

スペースノイド？

少年は「スペースノイド」の説明を読んでいた。宇宙から地球に派遣された調査員、スペースノイドは、自分が調査員だということを忘れて生活しているらしい。スペースノイドの特徴は、足の親指より薬指が長い、でべそ、しゃっくりが出やすい、などだ。少年は全部当てはまっている。

少年はクラスメイトにいじめられて不登校になり、辛い人生を送っていた。今日も朝から親に「学校に行ってみない？」と諭される。だが、スペースノイドについての文章を読み進めていくと、「やり残したことはやっておこう」と書いてあった。少年はかばんをつかみ、学校に行くことを決意する。

学校に行った彼は、靴下に砂を詰め込んだものを武器に、自分をいじめてきた友人たちに復讐を果たす。何度もクラスメイトを殴り、砂を顔にぶちまける。さらにはずっと好きだった女の子にキスをし、「幸せになってね」と言い捨てた。

新田の反乱

病院の清掃員であった新田あゆみ（戸田恵梨香）は、テレビ番組を見ながら、突如、携帯に手を伸ばした。過去に関係を持った外科医の牧野亘（松坂桃李）に電話をかけ、子供を認知してほしい、籍を入れてほしいと頼むが、エイプリルフールの冗談だと思われ、あえなく切られる。

そのとき牧野は、別の女と寝ていた。牧野は自分はこれからオペがあると言い、相手の女にお金をたかる。新田のことは「精神的に問題がある」と説明し、女ともう一度寝ると、タクシーに乗って高級レストランに向かう。そのときも新田から電話がかかってきたが、冷たくあしらって切った。

その冷たいあしらい方に、新田は、とある決意をする。新田はタオルをお腹に差し入れると、リュックを持ち、道で武器らしきものをかっぱらって牧野のいる高級レストランに向かった。

高級レストランで、牧野は麗子（菜々緒）とおしゃべりを楽しんでいた。牧野の語る武勇伝に麗子は目で相槌を打ちながら、牧野の足を自分の足でなぞる。麗子の足が少しずつ上へと向かっていくところで、聞こえた声に牧野は肩を揺らした。

「急いで出てホテルに行こう」そう麗子の腕を引くが、時すでに遅し。新田はレストランに突入し、次から次へと物を壊していく。牧野は逃げ出すが、新田のリュックの中になぜか入っていた銃に客も牧野も錯乱。奥の部屋に飛び込むと、ドアに栓をかけ、他の客ごと新田を閉じ込める。

新田は他の客を集め、銃を突きつけて脅すが、牧野は隠れたまま。その牧野のもとにオーナーシェフ（小澤征悦）が現れる。オーナーシェフは知り合いの警察に電話をかけて助けを求めるが、いつもの誇大広告だと思われ、あえなく切られてしまう。

一方、捕らわれていた客の一人が新田に近寄る。新田に対し、さまざまな言葉を使って銃を下ろすように説得する客。新田は客の足に向かって発砲する。その発砲で銃の弾はなくなったと踏んだオーナーシェフは、外科医を名乗っていた牧野を新田のもとに突き出す。

だが、牧野は実は外科医ではなく、女を引っかけるためだけに嘘をついていた。新田をこき下ろす牧野に向かって新田は発砲する。実は残り2発銃弾が残っているとオーナーシェフに言われた牧野は、「嘘つき」とオーナーシェフをなじった。

誘拐、発生

理香は突然、二人の男にさらわれる。追い詰められて車に無理やり乗せられた理香は、二人のうち立場が上の男、勇司が銃を発砲したことで抵抗を諦めた。そんな理香を、二人はラーメン屋と遊園地に連れていく。

理香に「楽しいか」と問い詰める勇司に、理香は「何が狙いなんですか」と聞く。「どうせ親は身代金なんて払ってくれない。私は本当の子じゃない。万引きをしても叱られず、諦められている。『女なら誰でもできる仕事』で生きていくからいい」と語る理香に、勇司は「なら話は早い」と告げる。

そのまま勇司は理香を風俗に連れていくと、そこで行われていることを見せる。怯えて固まっている理香に「よく見ろ、女なら誰でもできるんだろ」と問い詰めると、理香は逃げ出してしまう。

一方、理香の友達と母親は大騒ぎしていた。だが、警察が理香の友達の証言をもとに拉致した人の似顔絵を作ると、母親の表情は一変する。「全国に報道をして理香さんを探しましょう」という提案に、母親は「結構です、あれは本当にただのバカなんで」と断った。

実は、理香を連れ去ったのは、元夫であり、理香の本当の父親だったのだ。

「櫻小路夫妻」のお出かけ

皇室の関係者である櫻小路夫妻を名乗る夫婦は、その日、お忍びでタクシーで出かけた。宮内庁の車だと融通がきかないと話す二人は、札束で高級な服を買い、タクシーに乗り込む。「運転手さんのおすすめの店に行きたいわ」と話す二人を、運転手は緊張しながらもハンバーガー屋に連れて行った。

店の席を無理やり空けさせ、二人を連れていく運転手。ハンバーガーを満足げに食べる二人だったが、バイトの女の子が妻の方にコーヒーをこぼしてしまう。青ざめて土下座をする店長とバイト、そして運転手に、夫妻は服を着替えながら種明かしをした。

実は夫妻は天皇の関係者でもなんでもなく、ただの一般人だった。妻のガンが治ったお祝いに、今日一日はセレブになりきって遊ぶことにしていたのだという。それを聞いて店長とバイトはほっとし、にこにこと二人に話しかける。

だが、運転手は夫妻のその姿勢に感動する。運転手は「夫妻は本当に櫻小路夫妻だが、その場を収めるために一般人だと嘘をついた」と思い込んでおり、夫妻が弁解しても信じてくれない。諦めた夫妻は、運転手の誤解はそのままにしておくことにし、ゲーセンで遊び、コンサート会場へと向かった。

ニセモノ霊媒師

ある霊媒師は、訪れてきた青年が、交通事故に遭うと予言する。だが、「除霊してあげる」と言ってお金を巻きあげようとした瞬間に警察が入ってきて、霊媒師は拘留されてしまう。

取調室で、警官と押し問答をする霊媒師。「君のやっていることは詐取だ」と詰め寄られるも、霊媒師は「自分の信者は世界中にいる」と主張する。最終的には警官に対して折れ、罪を認めるも、霊媒師はこっそりと警官を占っていた。

転

「早まらないで」

やり残したことを終え、宇宙船を召喚しようと高いビルの屋上に上った少年。何度も宇宙船召喚の儀を行うが、なかなか宇宙船は来ない。

その様子を「自殺しようとしている」と勘違いしたクラスメイトたちが、下から励ましの言葉をかける。集中できないからとクラスメイトを追い払おうとしてもうまく行かず、少年はげんなりした顔で下を見つめていた。

そんな中、少年の様子を見て、クラスメイトは徐々に彼が自殺しようとしていないことに気がつく。一人、また一人とクラスメイトは立ち去り始めた。

牧野の告解

接客係（ユースケ・サンタマリア）やその場にいた客たちに取り押さえられた牧野は心にもない謝罪を新田に繰り返すが、新田が彼を許す気配はない。そんな最中、新田は芋けんぴを食べ始める。それを馬鹿にする牧野に向かって、新田は「あなたがくれたから！」と叫んだ。

新田は、牧野を好きになった経緯を語る。人と話せない自分に向かって、牧野は医学的効果を語って芋けんぴを渡してくれた。それから新田は、芋けんぴを食べながらだったら周りと話すことができるようになった。「牧野を信じることに決めた、思い続けていたら叶うと思った」と新田は話す。

その告白に心を動かされた牧野は、本当のことを話す。牧野の両親は医者で、牧野は医学部に裏口入学したけれど、頭が悪くて医者になることができなかった。だが、医者を騙って女性と関係を持っている間は自尊心を満たすことができ、そうしているうちにどこまでが嘘なのかわからなくなった。

「あなたに言ったことも全部嘘です」と話す牧野に、新田は銃を突きつける。周りが止めようと説得を試みると、今度は新田は自分の頭に銃を突きつけた。だが、目を閉じた新田の手から、「このフロアでは誰も死なせません」と、接客係はなんとマジックを駆使して銃を奪う。

地面に落ちた銃を拾い上げようとすると、先程足を撃たれた男が突如立ち上がり、銃を奪ってしまう。男が新田に向かって発砲しようとした瞬間、牧野は飛び出して新田を庇った。

転がった牧野の背中は赤く染まっている。周りが恐る恐る牧野に話しかけると、「俺、撃たれてないです」と起き上がる。背中の赤いシミを舐めてみると、なんとトマトソースだった。庇われた新田もお腹にタオルを詰めており、これで一件落着か、と安堵の空気が流れる。

だが、そうは行かない。実は服に詰めていたタオルはお腹を守るためのもので、実際に臨月を迎えていた新田は「多分、今、破水しました」と言う。救急車を呼ぶがなかなか来ず、ここで産ませるしかなくなってしまう。

そこで注目が集まったのが牧野だった。元医学部であり、女を口説くためとはいえ医学書も読んでいた牧野。牧野は無理だと言うが、その牧野に麗子は「私は実はCAじゃなくて助産師だ！」と叫ぶ。他の人も口々に「自分は出産を手伝った経験が豊富」と嘘をつき、牧野は覚悟を決める。

二人のお父さん

勇司の舎弟は勇司に詰め寄る。「理香ちゃんに自分が父親だって言わなくていいんですか」と言うが、勇司は頑なに言おうとしない。舎弟の文句はとどまるところを知らず、「なんで兄貴が鉄砲玉（危険を顧みず突撃する役回り）になんてならなくちゃいけないんですか！」と叫ぶ。

勇司はその日の晩、一人で敵のところに乗り込まなくてはいけなかった。「死んでもいいのか」と問い詰められるも、勇司は「やらなきゃいけない、かっこがつかない」と言い張り、考えを変えない。そして理香は、それを密かに聞いていた。

理香の家の前まで来ると、勇司は理香の母親に「俺に似てバカになっちまったが、諦めずに叱ってやれよ」と諭す。そして理香を車から降ろそうとするが、理香は頑なに降りようとしない。それでも無理やり理香を降ろそうとする勇司に、「かっこ悪くても生きてよ、お父さん」と理香は泣き出す。

その言葉に勇司も唇を噛みながらも、理香を怒鳴る。そこに駆けつけたのが、タクシーの運転手である、今の父親だった。先程まで夫妻を案内していた運転手は、理香の母親からの連絡に駆けつけたのだ。勇司に飛びかかって理香を逃がそうとする父親に、勇司は「愛されてるじゃねえか」と笑った。

コンサートへの出演

夫妻は船上コンサートを楽しみにしていたが、なんと、出演者の二人が急用で来れなくなってしまったという。出演者の二人は、牧野と新田のせいで高級レストランに閉じ込められていた。「お客様の中でコーラスに自信のある方」と声をかけられ、夫は妻の手を取って一緒にあげる。

妻は自信なさげにステージに立つものの、決意を固めて歌い始める。そんな妻の様子を見ながらハモリを重ねる夫は、その日の朝のことを思い出していた。

実は夫は、「奥さんはもう回復の見込みがない」と医者に告げられていた。だが、「4月1日」という時計の日付表示を見て、夫はそれを隠すことを決意する。外泊許可をください、と医者に頼んで妻を連れ出すと、夫は妻を思う存分遊ばせる。楽しそうに歌う妻を見て、夫はただ、涙をこらえていた。

霊媒師、警官の後悔、そして事故

警官は、罪を認めた霊媒師を開放する。「もうやるんじゃねえよ」と言う警官に向かって、霊媒師は語りかける。「あんたも大変だったねえ。目の前で犯人を取り逃がして、手配書ずっと持ち歩いてるんだろ。大丈夫さ」と話しかける霊媒師に、警官はぐっと唇を噛んで涙をこらえた。

一方、霊媒師の元を訪れた青年は、救急車で交通事故に遭ってしまう。その事故相手は、新田が足を撃ち抜いた客だった。

親友から恋人へ

夫妻のために席をどかされた青年二人は、ラーメン屋で食事をしたあと、家で遊び始める。二人は親友同士だったが、片方が「実は俺、お前のことが好きだったんだ」と打ち明けると、相手は豹変。「実は俺もなんだ」と抱きつかれ、青年は「嘘だ」と言えなくなってしまう。

そのまま押し倒され、彼らは事に及んでしまった。

結

勇司は暴力団の幹部の元にカチコミに行くが、いざ幹部を目の前にして、リュックの中に銃がないことに気がつく。代わりに入っていたのは、芋けんぴだった。幹部に芋けんぴを手渡すと、「気が利くなあ」と微笑まれてしまう。

思い返すと、どうやら理香にラーメン屋で、隣にいた女のリュックとすり替えられてしまったらしい。「さすが万引常習犯だ」と自嘲気味に笑う勇司は、かっこ悪く生きることを決める。

そして理香は、両親に万引きしたことを打ち明ける。「叱ってやれ」という勇司の言葉を思い出し、母親は頬を叩こうとするが、それより先に父親の手が出た。頬をビンタした父親は、「もうするなよ。一緒に謝りに行こう」と理香に語りかけ、二人は抱き合って泣く。

店では赤ちゃんが無事生まれ、拍手喝采が起こる。嬉しそうに赤ちゃんを抱く新田を見つめる牧野の目は温かかった。オーナーシェフと接客係は警官に「被害届は出さない、なるべく軽い罪にしてほしい」と話すが、警官は「正当防衛は無理だな」と告げる。

その警官は、足を撃たれた客の元に向かう。病室から逃げ出そうとしている男と、自分が持ち歩いていた手配書を見比べ、同一人物だと確信すると、にっこりと笑いかけた。

霊媒師はまた商売を始める。救急隊員の青年が霊媒師の元を訪れて除霊を頼むと、霊媒師は芋けんぴをおもむろに袋に詰め、息を吹きかけて、10万円で売りつけた。

夫婦が出演したコンサートは無事終わり、こちらも拍手喝采だった。甲板で風に吹かれながら、夫婦は話をする。「ありがとう、嘘をついてくれて」と妻が話し出すと、夫は「気づいていたのか」と泣き出す。「もう思い残すことはない、私は本当に幸せだった」と話す妻に、二人は抱き合った。

実は、新田が復讐を決意するきっかけになった「行方不明者が見つかった」というニュースも、嘘だった。それを演じた劇団員は麗子の彼氏であり、彼氏は麗子に「今日はキャバクラの出勤ないの」と聞く。そんな彼氏を見ながら、麗子は「私、助産師になろうかしら」と呟く。

そして、赤ちゃんを見ている新田に牧野は話しかける。「ひどいこと言ってごめん。助けてくれてありがとう」と告げた牧野は、「芋けんぴのこと、思い出したよ。あれは、腰が曲がった怪しげなおばあさんがくれたんだ」と話しだす。

「君のことを、好きかもしれないと思い始めてる。僕は君みたいに正直に生きたいんだ」と話す牧野に、新田は「でも私も嘘をついた。胸にタオルを詰めた。あなたが巨乳が好きだって知っていたから」と返事をし、二人は笑い合う。

牧野にキスをした新田が「これはエイプリルフールの嘘だから」と言い張ると、牧野は時計を見せる。「もうエイプリルフールは終わってるよ」と笑いかけると、二人はもう一度キスをした。

自身をスペースノイドだと信じていた少年は、「もちろん、嘘です！」と書かれた記事に落胆する。だが、続きに書かれていた「でもここまで頑張れた君たちなら、向き合えるはずだ」という言葉と、まだ少年のことを待ってくれていた数名の友人を見て、彼らと向き合うことを決意する。

そうしてビルの屋上から降りようとした瞬間に飛来した宇宙船に、「うそおおおおおおお！？」と、少年は叫んだ。

『エイプリルフールズ』の感想

見終わったあと、さすがコメディ、と思わず唸ってしまいました。扱っているテーマは、不登校や虚言癖、誘拐、ガンと、重たいものが多いはずなのですが、全く重苦しくなく見られるのです。

その秘訣は、キャストの演技にあると思います。本作は、キャラクターのひとりひとりがかなり強烈で個性的なのですが、それを本気で演じるキャストたちの表情や動きにはコミカルさと狂気が両立しています。「怪演」という評判がまさにぴったりの演技です。

また、構成がもたらす爽快感も素晴らしいです。起きる事件は最初から最後まで「嘘」というテーマで一貫しており、とてつもない量の伏線が最後には見事に回収されていきます。エンディングまで見終わったあと、「ここがつながっていたのか」と感動を覚えます。

誰が見ても、間違いなく楽しめる一作です。ぜひご覧ください。

『エイプリルフールズ』の視聴方法

『エイプリルフールズ』はDVDの購入やレンタル、U-NEXTやAmazonプライムビデオなどの動画配信サービスで視聴することができます。

2020年6月現在、『エイプリルフールズ』を視聴できるサービスは以下の通りです。